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エジプト人は絵を描かない 3

「絵を描く」という行為は何故それほど罪深く、多くの国で禁じられる行為なのでしょう?

最も似ているのが「お酒を飲む」という行為です。

お酒を好きな人、苦手な人、よく飲む人、全く飲まない人など色々いると思いますが、お酒を苦手な人でも法律でお酒を一切禁止してしまえ!とまで言う人は日本では少数派だと思います。
また、日本に限らず自由主義、民主主義の国では中々そこまで国家が国民に命令することは難しいでしょう。
しかし、多くの国、民族で、主にイスラム教の国ですが「お酒を飲む」ことは禁じられています。

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フランス人地理学者ナタリー・カヴァザン宅のディナー。
ワインが無ければフランス料理は成立しません。

私が印象的だったのはかつて、サッカーのサウジアラビア代表だった有力選手が遠征先のホテルでビールを飲んだことが大問題となり、サウジアラビアのサッカー協会を揺るがす大スキャンダルとなり、とうとうその選手は代表を追放されてしまった、という事件です。
まず、サウジアラビアの法律では外国のホテルでお酒を飲む、という行為は全く合法です。
また、ウィスキーやウォッカのような強い酒をがぶ飲みしたのならともかく、ビールです。
マジメなイスラム教徒の方には大変申し訳ありませんが、アメリカではカリフォルニア州など車が無いと生活できない地域ではビールを飲んで車を運転しても酔っぱらい運転にはなりません。
"seldom illegal"(時には違法)と交通規則には書いてありますが、個々の警官が判断してよほど泥酔していなければビールでは捕まりません。

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ヒッピー時代の大西。
アメリカでは皆、ビールを飲んで車を運転していました。

しかも、サウジアラビアはサッカーが国技でいつもW杯出場、不出場の瀬戸際ギリギリにいる国ですから国民は熱狂的で、実際にその選手がいないためにW杯予選の大事な試合を落とすのです。
そのため、その選手を代表に戻せ、というサッカー関係者の声もさすがに出るのですが、それはたちまち「何を言うか!遠征先のホテルでビールを飲むような人間を代表に戻せるものか!?」「あんな恥知らずの人間を代表に戻すくらいならW杯に出られなくてもよい」
言っておきますが、これを熱狂的なサッカー・ファン、母国のW杯出場を熱望する全国民が言うのです。
その選手は代表追放と国内リーグでも長い出場停止によって事実上、選手生命を絶たれました。

これは「絵を描く」という行為が禁じられている以上に、日本や欧米の人には理解しがたい現象でしょう。

「絵を描く」ことはいけない。
「具象画」「人物画」は特にいけない。
「裸婦」などはもってのほか。

これはどういうことでしょう。

大西が会ったイスラム教徒でビールを飲む人がいました。
びっくりして「ビールなんか飲んじゃいけないんじゃないか?」と言うと「いや、ビールはいいんだ。醸造酒(brewage)だから。いけないのは蒸留酒(spirits)だ」と言います。
どういうことかと言うと、ビールやワインのような醸造酒は自然が麦やぶどうを発酵させてできたものだから神の手によるものだが、ウィスキーやウォッカのような蒸留酒はそれを火にかけて蒸留したものだから人間(悪魔)の手によるものだ、だから、いけない、と言うのです。
これは主にアメリカやフランスに住むイスラム教徒がよく言う理屈(言い訳?)なのですが、もちろん、マジメなイスラム教徒から見たらトンデモナイ戒律違反です。

しかし、彼は「私はイスラム教徒だ。ウィスキーやウォッカのような強い酒は飲まない」と胸を張って言うのです。

くどいようですが、マジメなイスラム教徒の方には本当に申し訳ないのですが、彼もまたイスラム教徒だと大西は思うのです。

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シアトルの美術館で会ったアメリカ人。
オープニング・パーティでビールを飲んでいました。

つまり、完全な禁酒は「完全な抽象画、もしくは具象でも植物、風景、ギリギリ魚まで」ビールは「人物画」ウィスキーやウォッカは「裸婦」なのです。

日本人には想像もつかないことですが、世界には宗教が日常生活や飲食はもちろん、芸術においても大きな影響力を持つ国や民族が少なくないのです。

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エジプト人は絵を描かない 2

「絵を描く」という行為は、実は多くの国で罪深い行為です。

カヌー少女

西洋では多くの画家が短命なのはそのせいだ、という風潮さえあります。

ラファエロ 37才、ゴッホ 37才、ロートレック 36才、モジリアーニ 36才、スーラ 32才、エゴンシーレ 28才、ジャン=ミッシェル・バスキア 27才、ビアズリー 25才・・・・・・
日本でも、佐伯祐三 30才、岸田劉生 38才、関根正二 20才・・・・・・

しかし、驚くべきことに日本では日本画家が何故かそろって異常なほど長命なので、そういうことは全く言われません。

日本にいては絶対に解らないことが、世界には沢山あるのです。

エジプト人は絵を描かない 

このエジプト旅行は、ある日本人女性画家のエジプト移住のツアーだったのですが、私はその女性画家の助手として当時、寺山修司の映画に使う大きな絵を何枚も何枚も描いていました。

絵を描くことが宗教的にタブーの国に行く前に、そのタブーの中でも最も禁じられている大きな人物画を何枚も何枚も描いていたのです。

横顔の壁画部分01

これが、寺山修司の映画のために大西が描いていた絵です。

小舟少女

もう一枚。

IMG_0699_20170402231657f6f.jpg

絵を描く、という行為は世界的に見れば、実は多くの国で宗教上のタブーを犯す罪深い行為だったのです。

IMG_0700.jpg

日本と欧米の経済的に豊かな国、十数カ国のことしか知らない(興味の無い?)日本人にとって、これは驚くべき世界の現実でしょう。
(私もエジプトに行くまで、このことに気がつきませんでした)

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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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