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アーチストとは? 2

 ああ、この人には敵わないな、と思った人。
 二人目は意外な人です。
 村上隆です。

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 このブログを書くにあたって、改めてネットで村上隆のことをざっと調べてみました。
 そこで驚いたのは余りの悪口の多さです。
 政治家や芸能人でもないのにこれ程、悪口を書かれる人がいるでしょうか?
 
 公平、公正が建前のウィキペディアでさえ、悪口が平然と書き込まれているのです。
 そのほぼすべてが、現代美術のことを全く知らない人が書いたものです。

 村上隆のことが好きか?嫌いか?と聞かれれば、それは私も嫌いです。
 笑。
 しかし、村上隆が当初は自分の作品を、後になってボーメや日本の現代美術を世界で発表するために、どれだけの努力を続けてきたか?
 今の若い人には、解らないでしょう。
 20年前、どれだけ欧米の現代美術が差別的で閉鎖的で、白人絶対優位であったか。
 日本人は大金を払って、ヴェネチアやサンパウロのビエンナーレに建物を寄贈し、莫大な寄付をして、やっと作品を飾らせてもらっていたのです。
 日本の現代美術などタダでも見たくない。
 大金を払わなければ、見てもらうことすらできない状態だったのです。

 売り込みに行って頭を下げ、あからさまに見下されて、何の成果も得られずにすごすごと引き下がる。
 くやしいです。
 そうやって、何度も何度も売り込みに行くのです。
 今は村上隆や奈良美智がいます。
 売り込みが上手くいかないのはその若い作家の力が足りないからでしょう。
 しかし、20年前はとにかく「日本の現代美術など欧米のサルマネ」という評価しか無い所に行って、ゼロから売り込みをするのです。
 それも全部、英語でするのです。
 前もって、英語の文章を考えておいてそれを言います。
 しかし、相手がちょっと早口で言い返してくると、もう何が何だか解らなくなってしまいます。
 大西はホテルやレストランで「あなたは、とても英語が上手ですね」とよく言われます。
 それは、こちらがお金を払っているからです。
 相手にお金を払わせる(画廊や美術館をお金を払って借りるのではなく、企画で展示させる)英語はそんな生易しいものではありません。
 断ろうとする相手を押さえつけ、相手の(断ろうとする)意見を否定し、どれだけその場の空気が険悪になろうと自分の意見をしつこく言い、それでも最終的にはケンカ別れにならないように、言葉巧みに誘導して自分の意見を押しつけるのです。

 私は村上隆の売り込みのすべてを知っている訳ではありませんが、アメリカの各地でその売り込みのすごさを耳にしました。

 日本人は芸術家がそんな売り込みをするものではない、と考えるかもしれません。
 そうかもしれません。
 しかし、アメリカでは世界中から集まったアーチストが激しい売り込みの競争をしているのです。

 それはアメリカのアート・ビジネスの世界の話だろう。
 日本人がそんなものに合わせる必要は無い。

 そう言うのなら日本の画壇(野球で言えば日本のプロ野球)で一生やっていればいいのです。
 わざわざ苦労してメジャー・リーグでプレーする必要はありません。

 村上隆は日本のプロ野球(画壇)よりアメリカのメジャー・リーグの方がレベルが上だ、と思ったから売り込みに行ったのでしょう。

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 ニューヨーク、グランド・セントラル・ステーションでの展示。

 村上隆の努力は一度や二度、一年や二年で終わった訳ではありません。
 この20年間(成功するまでの期間を入れるともっと長く)少しの休みも無く続けられてきたのです。
 アメリカでも村上隆のことを悪く言う人はいます。
 「He is not Artist」(彼はアーチストではない)
 「He is Negotiator」(彼は交渉人ー外交やビジネスの交渉をする人、犯罪者などを説得する人ーだ)
 多くの人がそう言います。
 それでも、売り込みを続けたのです。
 他の誰よりもそのことが私には解ります。
 何故なら、私も同じ頃、同じようにアメリカで売り込みをしていたからです。
 そして、私は村上隆ほどがんばることができませんでした。
 余りにも辛くて、惨めで、屈辱的なのでどこかであきらめてしまったのです。
 売り込みは続けていました。
 しかし、村上隆のように多くの人に嫌われても絶対にやる、断固としてやる、何が何でもやる、というような鬼気迫るような気迫は段々と薄れて行きました。
 今、若い作家やキュレーターが欧米でどんな売り込みをしても、村上隆程の苦労をすることはありません。
 それは、村上隆のおかげだと思います。

 もう一度、言います。
 村上隆を好きか、嫌いかと言われたら、それは嫌いです。
 しかし、心の底から尊敬します。
 たった一人の人間が(日本人が)これ程多くのことを美術の世界で成し遂げた、という例を私は他に知りません。
 そして、それは決して生まれた家が大金持ちであったとか、何かの幸運や偶然によるものではなく、すべて村上本人の血のにじむような努力、それも休むことの無い継続によって成し遂げられたものなのです。

 村上隆は嫌いです。
 しかし、尊敬します。

 皆さんはどう思われますか?
 色々な人のコメントを待っています。


 PS: 私の嫌いの中の90%くらいは自分が人生の目標としていたアメリカにおけるアーチストとしての成功を村上隆が成し遂げているための妬み、嫉み、僻み、嫉妬だと思います。
 (残り10%はホントに嫌いなんだと思います。笑)
 
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アーチストとは?

 アーチストというのは非常にうぬぼれているものですから、自分の作品は2割増、他人の作品は2割引、の評価をするものです。
 ライバルの作家がいたとすると、自分の最高傑作とそのライバルの一番の失敗作を比較して自分の方が(かろうじて)上だ、という風に思うものなのです。
 当然、私も自分の作品が一番いいと思っています。
 笑。
 しかし、そんな私でも、ああ、この人には敵わないな、と思ったことが2度あります。
 
 この場合、歴史的な作家、レンブラントやダ・ヴィンチを見て、ああ、敵わないなというのはナシです。
 同時代の作家のみです。
 私の場合、外国の作家もどけます。
 ジェフ・クーンズやダミアン・ハーストを見て、ああ、敵わないな、と思っても正直、外人だから、条件やルールが違うから、という言い訳が心のどこかにあります。
 同時代の日本の作家のみです。

 一人目はボーメです。
 ニューヨークでボーメの作品を見たとき、生まれて初めて、ああ、この人には敵わないな、と思いました。
 この人は人生のすべてをこの作品に捧げている。
 ゴッホがそうだったように。
 すべてのことを犠牲にして、このフィギュア造りに賭けている。
 そう思いました。

 日本のどんな人気現代美術作家と比べても、私はアートに人生を捧げてきたつもりでした。
 しかし、目の前にあるボーメの作品。
 それは、ニューヨークの画廊の時空間を歪ませてしまう程、強烈なものでした。
 誇張でもなんでもなく、その画廊の中の空間がボーメの作品の余りの存在感の強さに、歪んで見えるのです。
 私一人の思い込みではありません。
 その場にいたアメリカ人全員が、ボーメの作品を「奇跡」を見るような目で見ていました。
 私の作品にこれだけの力は無い。
 そう思いました。

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 初めてボーメの作品を見た頃の大西。

 ちなみに私はアンディ・ウォーホルの代表作「マリリン」(Marilyn)と私の版画が並んでいるのを見て「おお、全然、負けてないじゃん!」と思った人です。
 苦笑。
 

ターザン・イングリッシュ講座 3

 不思議なことに、アメリカでは使われず、日本だけで使われている言葉に「ジャパニメーション」(Japanimation)があります。
 元々はアメリカでローカルTVの時間埋めなどに使われた、低予算で質の悪い日本製アニメを軽蔑して言う言葉でしたが、1990年代の半ば頃から日系アメリカ人などの地道な運動により、差別的であるという理由でアメリカのマス・メディアでは一切使用されなくなりました。
 今でも使う人はいますが「ジャップ」(Jap)と同じようなニュアンスの言葉です。
 日本人で使っている人は、こういう事情を全く知らないのでしょう。

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 解りやすく言うと、日本製アニメの尊敬語が「アニメ」(Anime)、軽蔑語が「ジャパニメーション」(Japanimation)です。
 
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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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