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村上隆とボーメ

 村上隆は言いました。
 ボーメの作品を村上隆の作品として展覧会がしたい。
 ハドソンは言いました。
 ボーメの作品をボーメの作品として展覧会がしたい。

 ハドソンから聞いた話です。

 これが、日本の現代美術が世界の第一線に躍り出た瞬間でした。
 ボーメの作品はそのくらい素晴らしかったのです。

 ハドソンは言いました。
 今まで見てきたあらゆる立体作品、特に人物彫刻の分野でこれ程独創的(ユニーク)な作品は見たことが無い。
 今まで世界中で発表されてきたどんな作品にも似ていない。
 圧倒的なオリジナリティ。
 誰の真似でもない独自性。
 ただ変わっているだけの作品なら、いくらでも見たことがある。
 しかし、これ程美しく、クオリティの高い作品は見たことがない。
 全く新しい表現をしていながら、今まで世界中で発表されたどのような歴史的な作品と並べても遜色がないくらい完成度が高く、技術的にも優れている。
 どうしてこんな作品が作れるのか解らない。
 初めて(実物を)見た時、自分の目が信じられなかった。
 彼(ボーメ)は魔法を使ってるんじゃないか?と思ったくらいだ。

 この時、ハドソンはたまたま、ヒマだったのか、はたまた、ボーメの作品のほとんどが売れていたので機嫌が良かったのか、非常に親切でていねいな説明をしてくれました。

 日本の現代美術は欧米のサルマネ。
 日本の作家にはオリジナリティが無い。
 自動車やエレクトロニクスは良いが、現代美術は最低。

 ずっと、そう言われ続けて、固く閉ざされてきた現代美術の、北大西洋美術、白人男性美術の厚く重い扉がその時、音を立てて大西の目の前で開こうとしていたのです。

 私はその歴史的瞬間に立ち会えたことの余りの喜びに、自分の絵の売り込みが今ひとつ上手くいかなかったことなどはもはやどうでも良いと思い、感動にうち震えていました。

 涙。

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 ニューヨークのボーメ。
 アメリカ人たちが驚愕していました。

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 ボーメの展覧会場に貼られた村上隆のポスター。
 ミッキーマウス風のキャラクターと一流でないアニメ制作会社に発注したキャラクターが描かれていますが、インパクトにおいてボーメには及びません。

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現代美術 12

 フィーチャー・インクは当時、現代美術界の大スター、ジェフ・クーンズなどを売り出し中の、野心を持った若い作家なら誰もが憧れる人気画廊でした。
 大西が会ったのはディレクターのハドソン(Hudson)です。(ファースト・ネームはありません。恐らく、カトリックだったからではないでしょうか)
 大西はアメリカで度々、差別的な扱いを受け、不愉快な思いをしたと書いてきましたが、ハドソンにはそういう所が全くありませんでした。
 大西のどんな質問にも(ボーメに関する質問にも)非常に親切に答えてくれました。
 ボーメに関する質問で、まず出てきたのは村上隆の名前でした。
 村上は当時、日本ではすでに成功した人気作家でしたが、ニューヨークではまだそれほどでもありませんでした。
 村上は一度目の展覧会をやって、二度目の展覧会をプレゼン中、ということでした。
 ハドソンの話は非常に興味深いものでした。

 村上は次の展覧会の資料としてボーメの日本で出版された作品集を持ってきた。
 このボーメに発注したアニメ風のフィギュアを現代美術の作品としてギャラリーに展示したい。
 ??????
 現代美術の専門家でなければこれは非常に分かりにくい話でしょう。
 当時、村上隆はミッキーマウス風のキャラクターの平面や立体、一流ではないアニメ制作会社に発注した動画作品などを発表していましたが、ハドソンはそれらの作品には非常に厳しい意見を言っていました。
 どういうことかと言うと、あのくらいレベルの高い作品でもメジャーリーグのトップでは中々通用しないのです。
 そのくらい厳しい世界なのです。
 そこで、日本のオタクの世界では超一流と言われる美少女フィギュアの制作者であるボーメ(いわゆる芸術家ではありません)にアニメ風のフィギュアを発注して、それを村上隆の作品としてニューヨークの画廊に展示する、というこれまた現代美術の専門家ではない普通の人には全く理解出来ない(実は当時の日本の現代美術関係者にもよく理解出来ていませんでした)提案をしたのです。

 ハドソンは言いました。
 それでは村上の作品ではなくボーメの作品ではないか?

 驚きでしょう?
 あの伝説的ディレクター、ニューヨーク現代美術シーンの大立役者であるハドソンがそう言ったのです。

 それなら、村上の展覧会ではなく、このボーメの展覧会をやろう。

 ハドソンははっきりとそう言ったのです。

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 今となっては貴重なフィーチャー・インクのカード。

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 PS: ハドソン氏は今年の2月9日、亡くなりました。
 63才でした。
 私はインターネットでそのことを知り、大変なショックを受けました。
 とても聞き取りやすい英語を話す、とても優しい人でした。
 心からご冥福をお祈りします。

現代美術 11

 1998年、大西はニューヨークの「フィーチャー・インク」(Featture Inc.)というギャラリーに絵の売り込みに行きました。
 そして、そこでやっている展覧会を見て息が止まりました。
 今まで、日本やアメリカで多くの展覧会を見てきましたが、あれほど大きな衝撃を受けたことはありません。
 初めてゴッホを見た時よりも、レンブラントを見た時よりも、ヨセフ・ボイスとナムジュン・パイクを同時に見た時よりも大きな衝撃を受けたのです。

 それは、ボーメ(Bome)の展覧会でした。
 今でこそ知っている人もいるでしょうが、その頃はアメリカはもちろん日本でも、どのような現代美術の専門家や評論家も、マス・メディアも、あの「美術手帖」の編集長ですら、その名前も作品も全く知らない無名の作家だったのです。

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現代美術 10

 1998年、ニューヨークで非常に重要な展覧会がありました。
 その時は誰も気がつかなかったのですが、それまでに欧米で開かれたどんな展覧会よりも日本の現代美術にとって重要な展覧会でした。

 その時、私はニューヨークの画廊で売り込みをやっていました。
 日本人は電話でアポを取っても会ってもらうことすら難しく、会ってもあからさまに見下した態度を取られるのが普通でした。
 その頃、アメリカの美術関係者に聞いた話では、日本の現代美術でいい作品を見たことが無い、日本人のペインティング(平面、油絵)でいいものを見たことがない、だから、前は時間があれば会って見ていたが、最近は日本人の売り込みは断るようにしている、という厳しいものでした。
 特に当時、日本で流行っていた抽象表現主義(中村一美や赤塚祐二のようなタイプの抽象画)、ニューペインティングのようなものは全くダメで、アメリカのギャラリー、キュレイターが選ぶことは絶対に無い、と言われていました。
 
 当時、日本の美術でかろうじて評価されていたのは版画でした。

 版画は19世紀のジャポニズムで高い評価を受けた浮世絵が、フランスでもアメリカでも「日本版画」(ジャパニーズ・プリンツ、ウッド・カット・プリンツ)と訳されていたため、まず、日本人の版画にはいいものが多い、という一種の思い込み、偏見(カン違い?)があり、大雑把に戦後(1945年以降)欧米で評価された日本美術といえば、ヴェネチア・ビエンナーレで大賞を取った木版画の棟方志功、同じく多くの国際版画展で入賞した池田満寿夫、日本では余り知られていませんがアメリカ人コレクターの間で絶大な人気を誇った斎藤清、イラストレーターから画家に転身した横尾忠則も大判の演劇ポスターがシルクスクリーンの版画として高く評価されていた、というものでした。

 大西が度々、このブログで書いてきた人種差別、白人優位の社会でJAZZクラブやボクシング・ジムでは黒人が優遇される、という逆差別が美術の世界でも版画に限っては日本人に当てはまったのです。

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 ジャポニズムの主役となった日本版画。

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 現代美術の世界でも版画は重要な役割を果たしていました。
 これは、アンディ・ウォーホルのシルクスクリーン。

現代美術 9

 現代美術とアニメ・エキスポ。
 その余りの違いについてここまで書いてきました。
 現代美術ではあくまでもお客様の日本人。
 アニメ・エキスポではゲスト・オブ・アナーの日本人。
 実は、ここに大きな真実が隠されています。
 
 大西は日本の現代美術が世界の第一線に躍り出た瞬間を見ています。
 それは、1995年、ロサンゼルスのアニメ・エキスポでもなければ、1996年、シアトルのCOCAでもありません。
 それは、1998年、ニューヨークで起きたのです。

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 当時、大西が常宿にしていたニューヨークの安宿。
 となりはのぞき部屋です。
 涙。

マンガ・エンターテイメント

 最後にひとつ。
 初期のアニメ・エキスポが若者の手作りの暖かいエキスポだったと書きましたが、LAの一流ホテル、ヒルトンの主要な部屋、ボール・ルーム、バンケット・ルームを数日間、貸し切りにしているのです。
 とんでもないお金がかかっています。
 実はそのプロフェッショナリズムもまた、すごいものだったのです。

 例えば、大西の豪華な部屋のエキジビションはイギリスのメディア企業「マンガ・エンターテイメント」がスポンサーになっています。
 
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 「マンガ・エンターテイメント」は当初、ヨーロッパのアート系フィルムを扱う会社でしたが、試しに「オネアミスの翼」をビデオ化した所、会社始まって以来の売り上げを記録し、ビックリして会社の方針を大きく変え、ついには社名まで変えてしまった(笑)という曰く付きの会社です。
 会社の大番頭さんは黒人の大男で大西はアニメ・エキスポで会うたびに、ものすごくお世話になっていました。

 ああ。
 なつかしい。

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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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