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合田佐和子の子供たち 4

 種田陽平について少し話しましょう。

 種田は寺山修司の映画美術を合田佐和子の助手として務めた3人の中でも、特に才能に恵まれた作家です。
 武蔵野美術大学の油絵科出身で寺山修司と出会った時には何と大学2年、若干20才の青年でした。
 他の2人の助手がその後、映画の世界からは離れていったのと対称的に映画美術の道を選び、日本の映画界では珍しい美術監督という確固たる地位を確立しました。

 その原点は寺山修司の「上海異人娼館」における装画助手の経験にあったのは間違いありません。

 何と言っても代表作はクエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビルVol.1」でしょう。
 アメリカと中国で製作されたケタはずれにスケールの大きい実物大のセットは、CG全盛の現代の映画美術に対する強烈なアンチテーゼでした。
 チャン・イーモウ監督の「セデック・パレ」の台湾における壮大な村落のセット、ウェイ・ダージョン監督の「The Flowers of War」の教会のセットも驚くべきものでした。

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 「The Flowers of War」の実物大の教会のセット。

 大西が個人的に忘れられないのは日本の三谷幸喜監督の「THE有頂天ホテル」です。

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 この映画で種田は大西信之を映画の中のセットを飾る装画画家として起用したのです。

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 種田は言いませんが、この「THE有頂天ホテル」の美術には「上海異人娼館」に対するオマージュの部分があり、老舗ホテルの4つのスイートルームを全く違う4つのイメージで演出したのは、寺山修司が異人娼館の客室を一つ一つ全く違うイメージで演出したのと同じだと思います。

 もう一つ。種田はモノクロームの部屋の装画に合田佐和子を起用したかったのですが、何らかの事情があって叶わず、次善の策(笑)として大西の絵を使ったのではないでしょうか。

 どうです。
 種田監督。
 違いますか?

PS: コメントに種田監督の答えがあります。興味ある方は、どうぞ。

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合田佐和子の子供たち 3

 本当の子供のことについても触れておきましょう。

 合田佐和子の次女の合田ノブヨは古い写真や印刷物を利用するコラージュ作家です。
 アーチストというものは母親がそうであったように、いささかエキセントリックな人が多いものですが、彼女は驚くほど謙虚な人柄で、自分よりも家族や身近な人たちを大事にする素敵な人です。

 これが彼女の作品です。

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 余りにも良い作品が多いのでノブヨさん本人に選んでもらいました。

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 もう一点。

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 この最後の作品は本の装幀に使われたものなのですが、母親がそれと気づかずに表紙がよいからと書店で買ってきたそうです。

 そんな素敵な話があるでしょうか!?

合田佐和子の子供たち 2

 「上海異人娼館」を撮影していた頃の合田佐和子。

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 同じく寺山修司。

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 合田さんは輝くばかりに美しい人でした。

 PS: 写真は全て大西信之の撮影。
 大西が写っているもののみ、種田陽平の撮影。

寺山修司の名言

 「上海異人娼館」撮影中に数えきれないほど多くの言葉を寺山さんから聞きました。
 最も印象に残っているのは「大西くん、次、出番だからスタンバイしといて」という言葉です。
 寺山さんはアイデアに詰まったり、撮影が上手くいかなくなると、気分転換に大西が絵を描いている現場に来ることが多く、必ず言うのがこのセリフでした。
 最初はビックリしていたのですが段々と大西がビックリする顔を見るための冗談だということが解ってきて、適当に調子を合わせるようになっていったのですが、撮影最終日に近いある日「大西くんのために作った役だから」と言って、ニワトリ泥棒の役を用意して本当に撮影してくれました。
 冗談を覚えていてくれたのか?気まぐれだったのか?よく解りませんが、とてもうれしかったです。

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 エキストラと言っても周りは全て大部屋のベテラン俳優ばかり。
 とても緊張しました。
 (共演の女優さんと)

合田佐和子の子供たち

 合田佐和子は日本の美術史においても、世界の美術史においても過小評価されている作家です。
 しかし、寺山修司の映画において彼女の助手を務めた3人の若者はその後(約1名を除いて)素晴らしい作家へと成長しています。

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 長男は大西信之です。
 3人の助手の中では最も出来が悪く、合田佐和子に最も多く叱られました。
 背は高かったですが無神経で声が大きく、性格も生意気で合田をしばしば怒らせました。
 女性にはモテませんでしたが子供には好かれ、合田さんの本当の子供2人、特にノブヨさんとは気が合いました。
 皆さんご存じ、このブログの主人公です。

横顔の壁画の前で

 次男は横山宏です。
 ハンサムで女性にやさしく、才能にあふれた素晴らしい若者でした。
 大西とは対称的に細やかな神経の持ち主で礼儀正しく、合田が横山のことを悪く言うのを聞いたことがありません。
 現在の肩書きは難しいのですがSFのロボットや戦闘機械をデザインするイラストレーター、造形作家で、彼の作品は模型会社によって量産化され、ドイツ、アメリカ、フランス、イギリスなど世界中に熱狂的なファンがいます。

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 三男は種田陽平です。
 3人の中では最も才能に恵まれ、映画美術の世界で日本の映画史上、最も成功したアーチストの一人だと思います。
 クエンティン・タランティーノ、チャン・イーモウ、ジョン・ウー、宮崎駿など、世界的な映像作家たちが種田に寄せる信頼は並大抵のものではありません。
 性格は3人の中で最も謙虚で、ここに書いたことも恐らく本人はそんなことはありませんよ、と必ずや否定することでしょう。

 つまり、合田佐和子の知られざる側面、偉業は、世界的に見て2人の非常に優れたアーチストと1人のそうでもない(笑)アーチストを育てた、ということなのです。

プロフィール

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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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