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さよなら九段下ビル 16

「さよなら九段下ビル」のバナー(垂れ幕)。

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さよなら九段下ビル 15

 2011年11月〜2012年1月の短い期間、九段下ビルは夢のような空間でした。

 ひっきりなしに観客が訪れ、新聞、TV、ラジオ、インターネットの取材が続きました。

 3階の「九段下アトリエ」では6つのグループと個人による展覧会が次々と開かれ、1階の大西の部屋では最後の日まで絵が描かれていました。

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 フランスから来たアーチストとインターネット・ニュースの記者たちによる取材とハプニング。

 桐生眞輔の手による「さよなら九段下ビル」の大きなバナー(垂れ幕)。

 突然、訪れた映画監督の樋口真嗣。

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 九段下ビルそのものが巨大な現代美術作品(インスタレーション)だったと言っても過言ではありません。

 下の写真は1階の大西の部屋で作品が製作されている様子です。

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 急遽、作家の高山真衣にモデル役をやってもらっています。
 製作されているのは屋上のピラトの絵と対になるような大きな顔の絵です。

 それをまた沢山の観客が見に来ます。

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 小さな女の子が絵を見に来ました。

 これ、誰?

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 え? あたし?
 笑。

 これが、あの有名な「九段下ビル」の最後の日々だったのです。

さよなら九段下ビル 14

 前回の記事でクリストがドイツの国会議事堂やマイアミの海や島を梱包するために、どれだけ苦労をしたか、ということを書きました。

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 金田翔の作品を説明するのに何故、クリストを例に挙げたかというと、金田もまた、カラーテープによるインスタレーションを制作するために九段下ビルの所有者、関係者などに働きかけていたからです。
 口だけで言うのなら誰でもできます。
 金田の本来の作品は解体途中のビルの壁面全体、もしくは一部にカラーテープによる壮大なインスタレーションを施す、というものでした。
 もし完成すればビル全体、もしくは一部が巨大な現代美術作品になる、という素晴らしいアイデアでした。
 日本中のマス・メディアが注目する九段下ビルのアート・イベントを象徴する作品になったと思います。

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 私は金田のビルを所有する不動産業者、解体を進める解体業者との非常に難しい交渉を全部、見ています。
 解体業者は所有物であるビルの壁面を覆う白いパネルに、インスタレーションを施されることを非常にいやがりました。
 不動産業者はそもそも、このアート・イベント自体に反対していました。
 解体が遅れることによって、大きな経済的損失が生じるからです。

 ここには書けないくらい熾烈な交渉、激しい言葉や書面のやり取りがありました。
 展示の準備が間に合うタイム・リミットぎりぎりまで交渉は続けられましたが、決裂しました。

 金田は全く時間のない中で急遽、計画を変更し、所有者の許可を得られた屋上のせまいスペースに小さな作品を設置したのです。

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 kudanshita 2011

 その作品も東京MXTVのレポーターが数多い作品の中から選んで放送するくらい素晴らしいものでしたが、もし、ビルの壁面のカラーテープによるインスタレーションが完成していたら、フランスの作家ピラトの作品と共に、このアート・イベントをより高いレベルに押し上げる素晴らしい作品になっていたと思います。

 しかし、金田はそのことをTVでも新聞でも一言も言わず、実際に出来た小さな作品が自分の作品の全てである、という態度を取り続けたのです。

 そして、それは全く正しいのです。

 一見、簡単そうに見える現代美術作品の制作にも、陰では様々な苦労や努力がある、ということを知っていただけたら幸いです。

さよなら九段下ビル 13

 「さよなら九段下ビル」の展示が何故、優れていたかというと、現代美術の様々な作例が非常に解りやすい形で展示されていたからです。

 芸大グループの金田翔の作品を例にとってみましょう。

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 2007 nakano

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 2009 yokohama

 金田はカラーテープによるインスタレーションを制作していました。
 ビルの壁面や室内、屋外の様々な場所にテープを貼った(張った)作品です。

 金田と全く同じではありませんが、この種の作品で最も知られている作家に、クリスト(Christo)がいます。

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 これが、クリストです。

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 巨大な布で何でもかんでも包んでしまう作品が有名です。

 アイデア自体は誰でも思いつくようなものですが、クリストはこれらの作品を実現するために建物の所有者、海や島の管理者、自治体、国に至るまで、許可を得るために膨大な労力(エネルギー)を費やしています。

 ネゴシエイト(negotiate 交渉する)という言葉を大西はよく使いますが、ドイツの国会議事堂を包もう、マイアミの海と島を包もう、と思いつくのは簡単ですが、それを実現するために関係者、各省庁の許可を得るために駆けずり回るクリストの努力と苦労は並大抵のものではありません。

 アートの世界では素晴らしい作品が発表されると「それなら、オレも考えていた」「私も同じようなアイデアを持っていた」ひどいのになると「私のアイデアをクリストに盗まれた」という人まで出てきますが、アート、特にこの種のタイプの作品ではいくら同じような事を考えていても、それを実現できなければ何の意味もありません。

 「あの程度の作品なら私でもできる」「オレならもっといい作品ができる」というのは現代美術の世界では、全く意味が無いのです。

さよなら九段下ビル 12

 九段下ビルの話の続きをしましょう。

 これは、サンケイ・エキスプレス 2011年12月6日 

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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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