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オリンポスの果実 2

 もう一つだけ「オリンポスの果実」の中で好きな文章をあげましょう。
 その後の私の人生を決定づけた文章です。

 「白い国! 蜃気楼もかくや、ーなど陳腐な形容ですが、事実、ぼくは蜃気楼をみた想いでした。背後には、青空をくっきりと劃した、峰々の紫紺の山肌、手前には、油のようにとろりと静かな港の水、その間に、整然とたち並んだ、白いビルディング、ビルディング、ビルディング。それがいかにも、摩天楼という名にふさわしく、空も山も、為にちいさくみえる豪華さです。その頭上に、夏の太陽が、カアッと一面に反射して、すべては絢爛と光り輝き、明るさと眩しさに息づいているのです。ぼく達の大洋丸は、悠々と、海を圧して、碇泊中の汽船、軍艦の間を縫い、白い鴎に守られつつ、進んで行きます。」

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 今回のオリンピックの話題が出てこなくて、すみません。
 なにしろ文科系(美術系)なもので(笑)

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オリンポスの果実

 文学には非常に疎いのですが、中学生の時、夏休みに読書感想文の宿題で読んだのが田中英光の「オリンポスの果実」です。

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 読んだことのある方はご存じだと思いますが、1936年のロサンゼルス・オリンピックを舞台にボート代表の主人公と走り高跳び代表の女子選手との淡い恋を描いた、日本の近代文学の代表と言われている小説です。

 生まれて初めての洋行(海外旅行)で観るもの聞くもの全てが光り輝いているような瑞々しい文章で、ロスアンゼルス、ロングビイチ、南カルホルニア、ダウン・タアオン、チャイニイズ・グロオマン劇場、十仙店(テンセンストア)・・・・・・などなど独特の外国語表記に中学生だった私はどれだけ外国(アメリカ)への憧れをかき立てられたか解りません。
 その中のいくつかの文章は今でも暗記しているほどですが、中でも好きなのが主人公がオリンピックの試合当日を迎え、善戦虚しく敗れ去るところです。

 少し引用してみましょう。

 「その時のぼく等の様子を、当時の羅府新報がこんなに報告しています。夕刻のロングビイチは鉛色のヘイズに覆われ、競艇コオスは夏に似ぬ冷気に襲われ、一種凄壮の気漲る時、海国日本の快男児九名は第一レインを割り当てられ、逆風と逆浪の最も激しい難路を辿らねばならず、且つ、長身に伍して、短軀のクルウを連ね、天候さえ冷え勝ちで、天の利、地の利、人の利、すべて我々に幸いせず。頼むは、日本男児の気概のみ」
 何度、この一節を読んだことでしょう。
 「羅府新報」は全米で最も古い日系新聞のことで、当時、ロサンゼルスのことを日本語で「羅府」と書き「らふ」と発音したのです。

 私がロサンゼルスで二度目の展覧会をやった時、地元の新聞社が取材に来てくれました。
 そして、若い女性記者が出した名刺には「RAFU SHINPO」とあったのです。
 やややややや。
 「RAFU SHINPO」とは、あの「オリンポスの果実」に出てきた「羅府新報」のことではないか?
 もはや、日系人も二世、三世、四世となり、紙面もほとんどが英語になっていたため最初は気がつかなかったのですが、それはまぎれも無くあの「羅府新報」でした。

 写真は無く文字だけの記事でしたが、43行にわたってシアトルやロサンゼルスにおける私の展覧会の様子が載りました。

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 「天の利、地の利、人の利、すべて我々に幸いせず。頼むは、日本男児の気概のみ」

 それはまさしくアメリカで絵の売り込みに苦戦していた、その頃の私の気持ちでした。

 (この時の「羅府新報」は今でも大事にとってあります)
 

ロサンゼルス

 LAの夏は毎日が快晴で、一ヶ月くらい雨が降りません。
 「終わらない夏」とか「永遠の夏」というのはLAの夏のことではないでしょうか。

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ロサンゼルス Vol.15

 フーテンの寅さんとタコ社長。
 笑。

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ロサンゼルス Vol.14

 そんなワケで、LAのメキシコ人街、オルベラ・ストリートをフーテンの寅さん(古っ)のような格好でうろつく私です。

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FC2ブログへようこそ!画家の大西信之です。日本とアメリカのファインアートとポップカルチャーに興味があります。最初は自分の仕事、ゆくゆくはその他の事柄についても取り上げていきたいと思います。

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